展覧会紹介

 今、北海道を代表する木彫家、藤戸竹喜(ふじとたけき、1934-2018)の驚異的な仕事に熱い眼差しが注がれています。
 藤戸竹喜は、北海道の美幌町に生まれ、少年期を木彫り熊の職人で賑わう旭川市近文で過ごしました。熊彫りの名工として知られた父・竹夫のもと、12歳から熊彫りを始め、15歳には、一人前の職人として木彫り熊を店頭で彫り始めました。以来一貫して木彫制作に取り組み、1964年、30歳で北海道釧路市阿寒湖畔に民芸品店「熊の家」とアトリエを構えて独立。アイヌ民族の伝統的な彫りの技を受け継ぎながら、熊、狼、狐やシャチ、ラッコ、エビ、カニなど北に生きる動物たちや、先人たちの威厳あふれる肖像彫刻へと作域を広げ、独自の芸術世界を創造しました。
 生命あるものへの深い愛情に根ざした生気あふれる表現は、国内外から高く評価され、2015年に北海道文化賞受賞、2016年には文化庁から地域文化功労者として表彰されています。
 本展では、藤戸竹喜の仕事の全容を、初期から晩年に至る代表作約90点によって紹介するとともに、藤戸竹喜が受け継ぎ、収集したアイヌコレクションをあわせて紹介します。

藤戸竹喜

FUJITO Takeki
(1934-2018)

じっと木を見ていると中から姿が出てくるのです。見た物が頭の中に入り、それが木の中に浮かび、それを彫り出していく。上手に周りの木を取り除いて中の物を出してあげる、という具合です。

北海道新聞2014年10月6日掲載
「私のなかの歴史」より

海中で貝をひろうラッコ。そのリアル。

《ラッコ、潜る》(部分)1993年 エンジュ 個人蔵

氷上をのっそり歩く母熊と好奇心いっぱいの子熊たち。

《白熊の親子》 (部分) 1999年 クス 個人蔵

木の中から物語を取り出す。それが藤戸の超絶の技。

《熊狩・コタンへ》 1980年 クルミ 個人蔵

熊に恋を語らせることもできる。60代、円熟期の優作。

《白熊》 (部分) 1999年 クス 個人蔵

熊彫り一筋の藤戸が35歳で挑んだ観音立像。

《樹霊観音像》 (部分) 1969年 イチイ 正徳寺蔵

以上 撮影:露口啓二

札幌駅のイランカラテ像、初めての遠征へ—。

《イランカラテ像》 (部分) 2014年 クスほか

撮影:大滝恭昌

藤戸竹喜のアイヌコレクション

藤戸は、木彫に打ち込む一方で、先人たちが残した衣服や宝刀を集め、自宅や店舗に展示していました。本展では、そのなかから優品を厳選してご紹介します。